〜親父の背中〜
まだ幼稚園に入る前かくらいの時だけどね。
親父の運転する車の助手席に乗ってて、シートベルト
イタズラしてたら多分外れちゃったんだよね。
そしたら直進方向に脇から『ビュンっ』て赤い車が横切ってきたんだ。
子供ながらにぶつかっちゃうって思うくらい、危険な距離感。
当然、親父は急ブレーキ!ベルトが外れてた俺はおもいっきりオデコを
打った。泣きながら痛い痛いという俺とみかんくらい腫れてきたタンコブを見て
ベルトを遊んで取ったことを叱られた。そしてタンコブにまさるくらいの
ゲンコツをもらった。一層泣きじゃくる俺の目の前に飛び出していった
親父が赤い車に迫ってこういった。
『子供が乗ってるんだぞ、何かあったらどうするんだ!ふざけるなー!...』
もっと乱暴な言葉だったし、鬼気迫るものがあったから、泣き止んで
しまったのを覚えてる。タンコブよりも後からもらったゲンコツよりも
重い重い言葉だったのは幼くても十分に感じられた。
親父は何でも器用に作ったり直したり、人に気を配ったり、大雪降れば
誰よりも朝早く起きて、親戚や従兄弟の家まで行って雪かきして帰ってくる。
頼まれてやったことなんて一度も無いってオカンが言ってた。
親父ってそういう人。頑固散らかして八つ当たる。
平和主義者でピースフルで笑ってばかりで
PTAでスピーチ硬くて、パンチパーマで。
先生もお手上げのワル生徒を本気で追っかけて。
納得いかなきゃ、どんな場所でも
胸ぐら掴んで投げ飛ばしてる、先生や会長、あちらの方でも。
無茶苦茶だけど、クソ真面目で仲間のことは絶対に守る。
どうしようもないヤツでも。どこか行きたいなら行けばいい。
でも戻ってきても普通に迎える。
失敗しても直ぐに謝らない、言い訳をしろ。
これが社訓。
俺の見てきた親父の背中はムチムチして
時に汗で湿っていたけど、大きく綺麗な背中だった。
俺の背中は今どんなだろうか?
ムチムチして湿っているとは思うけど先は長いな。
でも俺は親父の次男だから、親父も次男だから
自らを切り拓いた、根性のDNAを受け継いでいると
最近分かったよ。俺も頑固だ。
親父、ラーメン美味かったよ。ココ最近で一番!
次男
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